a love so brand new 3





西門さんの恋が終わった。

そして、わたしの恋も終わった。



西門さんと過ごした翌日わたしはつくしと一緒に和菓子屋でバイトしながら、いつもと同じ放課後を過ごしていた。
「昨日はほんとにありがとう。いろいろ心配かけてごめんね」
つくしはわたしを心配して朝方まで道明寺さんとカフェで付き合ってくれた。
大変なことをしてしまった後悔と失恋はやっぱり辛くて、お腹いっぱい美味しいケーキを食べても気持ちが晴れるわけもなく、そばにつくしがいてくれたのはうれしかった。
だから西門さんとのことをつくしにそっと打ち明けると呆然として混乱していた。
「それで西門さんと」
「つきあわないよ」
わたしはきっぱりと応えた。
「最高の思い出もらって、あたしの中で全部終わった」
もう迷わない。
最高の思い出をもらってわたしの恋は終わったんだから・・・
今度は幸せな恋をしよう。
自分らしい幸せな恋をしよう。




あの日から数週間が過ぎた。空は冬晴れのよい天気だが風はまだ冷たい。
三年生が登校しなくなった校内は広々としてのんびりとしている。
茶道部の和室でお稽古の準備をしていると外がやけに騒々しい。女子の黄色い声に準備をしていた友達と顔を見合わせた。
「騒々しいね、何だろ?」
友達は立ち上がると廊下に出て行ったと思ったらかけ戻って来た。
「に、に、西門さんが来てる!!優紀、西門さんだよ!」
「え・・・?」
優紀は慌てて立ち上がると開いている窓からつま先立ちになって顔を出した。門に女の子たちがたくさん群がっているのにすぐに気がついた。あちこちの窓からひとが顔を出している。そのほとんどは女子だった。
「優紀、西門さん見えた?さっき見えたんだけど」
友達も優紀と並んで覗き込んでいた。
「本当に・・・西門さんなの?」
「うん、間違いない。あんないい男、見間違うはずないよ」
優紀はもう一度ひとだかりに目を凝らすが総二郎の姿を見つけることが出来ない。いても立ってもいられなくなり、優紀は走り出した。ぺたんこのパンプスのストラップを踏み転びそうになって駆け下りていた階段の途中でストラップをはめる。門まで走りたどり着くと上から見たときより多い数の女子がいて、優紀は立ち止まった。
(なんでこんなところに走って来たんだろ?)
背の高い総二郎は頭ひとつ飛び抜けていて、その後ろ姿を見つけた優紀は離れた場所から見つめていた。
(あんなことがあったに後に、わたしったらどんな顔して逢うつもりだったの?!もうっっ、恥ずかしい!)
優紀は両手で赤くなっている顔を覆い隠した。
(わたしに逢いに来たわけでもないのに、こんなところでのこのこと間抜けに顔を会わせたくないよ)
優紀はくるりと背を向け顔を覆っていた手を下ろし、揃った靴のつま先を見た。すうっと小さく息を吸い込み右足を踏み出そうとしたとき、ぎゅっと強い力で右手が握られた。
「ひゃあ!」
優紀はおかしな声を上げ小さく飛び上がった。
「あっ、驚かしちゃった?悪い」
聞き慣れた声に優紀はつい振り向いてしまった。
「待ってたよ、優紀ちゃん」
優紀は恥ずかしさで何がなんだかわからず、総二郎の美しい笑顔を見上げた。







ちょっといままでは違う優紀ちゃんを目指していますが、まだそんなに違いはないかもですね。少しずつ違う雰囲気を描けるといいなと思っています。
有様が『リベリアンガール』をチェックしてくださり、総二郎の心境にぴったりとも言っていただけてとっても嬉しかったです。もしかして他にも聴いてくださった方がいればうれしいです。とってもいい曲です。興味ある方はぜひどうそ〜♪



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a love so brand new 2





めずらしく夜遊びについて来た類はいつの間にかソファーでうたた寝をしている。類の隣にいた女はまったく相手にされずいつの間にか姿を消していた。
「類、ここまで来て寝ることはないだろう」
類はあきらに突つかれても目を閉じたままだった。
「類くん、調子悪いの?」
あきらの隣に座っている赤い口紅の女が媚びるように尋ねる。
「いや、類はいつものことだよ。さすがにフロアなら騒々しくて眠れなかっただろうけど、ViPルームは防音で静かだから類なら仕方ない」
あきらや総二郎にすれば類が眠りこけていることなど毎度のことだからは気にはならないが、女たちにすれば滅多に姿を露わさない類までが現れ興奮に拍車をかけていた。総二郎とあきらの登場だけでも客の入りが、特に女性客の入りが倍になるというのに、類までが揃えば店内はどこもかしこも脚の踏み場もないほどの混雑ぶりだった。


「総二郎くんに誘われるなんて思ってみなかった。うれしくて友達に自慢しちゃお」
ショートカットの女が口角をくっと上げ笑った。きれいな三日月型の笑みに作り物じみた嘘っぽさを感じる。そう言えばさっき読者モデルをしているとか話していたと思い出した。
この女は総二郎たちが店内に足を踏み入れた早々に声をかけて来てVIPルームに伴った。小柄で、華奢で、ショートカットで、何よりも大きな丸い瞳と小さな唇がどことなくあの子の面影に似ていて、総二郎はつい肩を抱いた。
女は総二郎に誘われたのがよほどうれしいのか、きゃっきゃとはしゃぎ、有名ファッションしで読者モデルをしていて、本格的にモデルにならないかとスカウトされているなどと自慢げに話す。興味がなくても適当に「すごいね」と答えられるの遊び人の性だった。
けれど興味が薄れて行くに連れ違いが次第に目についてしまう。似ていると思った目は長いまつげと濃いマスカラで縁取られ、小さな唇もグロスで不自然に光っている。あの子は濃厚なハイブランドの香水なんて纏わない。
「類くん、丸くなって寝てるね。寒いのかな?」
女がそう言うので類を見るとあきらのジャケットに包まっている。
「ね、総二郎くん、今夜は・・・あたしがあっためて上げる」
総二郎の耳元に唇を寄せ女が囁いた。総二郎は驚いて女を見ると上目遣いに艶めいた微笑みを浮かべていた。そして腕を絡ませあからさまに豊かな胸を押し付けて小首を傾げる。
総二郎は開いた口を片手で覆い、唐突にはじき出された本心に呆気にとられていた。







みなさま、いかがでしょうか?楽しんでいただけているでしょうか?そうだとうれしいです。
1話ではいつもの優紀と違う感じになりそうですとお話ししましたが、総二郎もちょっと違うところがあるかもです。でも、好きなタイプはいままで描いてきた総二郎なので、黒王子も含めて(笑)、そんなに印象が違わないかもです。

題名新しくしました。『a love so brand new』和訳なら「新しい愛」かな?わたしの尊敬してやまないマイケル・ジャクソンの『Liberian girl』(リベリアン・ガール)という曲の一節です。「君が現れ、僕の世界が変わった。今までと全く違う新しい愛が生まれた。君が現れ僕を変えてしまった。心の底から思うよ」なんていう歌です。総優にぴったりです!ぜひ一度聞いていただきたいラブソングです♡


a love so brand new 1





立春を迎え陽光は春めいてきていた。


午後からやってきた総二郎は授業中の静かな学内を抜け中庭にたどり着いた。人影もなく静かで、総二郎は手入れの行き届いた芝生に寝転がり晴れ上がった青空を見上げた。筆で掃いたような薄い雲が流れている。
あの日、雲は朝焼けに照らされオレンジ色に染まっていたけれど、あの子の顔は真っ赤で、小さな身体からはバニラの甘い香りがした。
もう何度思い返したのかわからないほどその記憶は鮮明で、忘れることが出来ず脳裏になぜかしっかりとこびり付いている。


デニムのポケットの中のスマホがぶるりと振動し、総二郎は勢いよく起き上がって慌ててスマホを取り出した。ディスプレイには顔も思い出せない女の名前があり、興味も持てず総二郎はぽいとスマホを放り投げた。
もうどれほどスマホの通知音や振動に調子を狂わされているか知れない。ディスプレイを覗いては面白くない気分になる。
次々に送られて来る女たちからのSNSの通知に、あの子のメッセージが埋もれてはしまわないかと心配した。しかしそんな総二郎の心配は杞憂で、あの日からもうひと月近く過ぎているというのにあの子から一切音信がなかった。
総二郎はもう一度寝転がり空を見上げた。


総二郎たちは間もなく高校を卒業し四月からは大学生になる。
キャンパスは隣接しているし、いままで同様真面目に講義を受けるわけでもない。幼馴染みの猛獣は相変わらずつくしと続いているので、このまま変わらず仲間として付き合っていくことになる。つくしと親友のあの子も集まりには誘うので会うことはできるだろう。

会うことはできる。

仲間としてなら。


芝生を踏む足音が近づいて来るのに気がつきながらも、総二郎はぼんやりと流れる雲を眺めていた。
「総二郎、ここにいたのか」
あきらが立ったまま総二郎を見下ろしていた。
「何度も電話したんだけど・・・気づかないはずだな。スマホ、あっちにあるぞ?」
あきらが指し示したのは先ほど総二郎がスマホを放り出した方向だった。
「あー、そうだな」
気のない返事をし面倒で寝転がったままでいると、あきらが視界から消えスマホを手に戻ってきた。
「メッセ来てるぞ、ほら」
「ああ・・・サンキュー」
総二郎は差し出されたスマホを受け取ると無造作にポケットに突っ込んだ。
「確認しなくていいのか?」
あきらは隣に腰を下ろし長い脚を投げ出した。
「別にいい」
「へえ・・・」
総二郎の素っ気ない態度に、あきらは短くでも何か言いたげに応えた。
「今晩はどこ行く?新しく出来たクラブにするか?類も暇だからめずらしく来るって言っているから」
「ああ、どこでもいいよ」







新連載を始めさせていただきます。よろしくお願いします。
『precious』の番外編を途中のままですが、どうしてもこちらを書きたくなってしまいました。番外編の続きはまた書いていきたいとは思っています。
すこし段落などを変えてみましたが読みにくいですか?読みにくいようでしたらまた考えますので教えてくださいませ。
こちらも楽しんでいただけるとうれしいです。


precious 〜 番外編4(仮) R話

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Addiction to Love 5





総二郎はほころぶ口元を優紀に見られぬように隠した。

「・・・・・・・・・・・・・」

「ん?なに、優紀ちゃん?」

優紀の口が小さく動いていたが分からなかった。

「・・・西門さん・・・・・・・・・・・サ・・サラ先輩のこと・・・忘れられないから・・・・・・・・」

「サラを・・・・・忘れられない・・・・・・・」

総二郎がついおうむ返しに答えてしまったのは、意味が分からないためだった。

なぜ突然サラの名前が出てきて、その名と『忘れられない』という言葉はもっと結びつかず総二郎は優紀が言ったまま繰り返した。

優紀は涙に濡れた顔でこくんと頷いた。

総二郎は優紀が大きな勘違いをしていることにようやく思い至った。

幼い少女は自分の価値など頓着していない。

優紀らしいといえば優紀らしくて、ほんとうに面白いと総二郎は楽しくなった。

「えっと・・・優紀ちゃん、あのさ」

「に、西門さんはサラ先輩じゃないとだめなんです・・・」

優紀は止まらぬ涙を拭い、顔を覗き込んでいた総二郎の肩を押し返した。

ごしごしと拭うために頬も鼻の頭も真っ赤になってしまっている。

「幼馴染みで・・・小さいときから一緒にいるサラ先輩は西門さんのことわかってくれるから・・・今みたいに女のひとと付き合っても・・・・・西門さん、サラ先輩と」

「サラとは付き合えない。もう終わってる。優紀ちゃんも知ってるだろ?」

総二郎は優紀の頬を伝う涙を指で拭った。

サラのことを好きだったのは本当だけど、やはり幼馴染みに違いなく、サラを手に入れたいと足掻くことはしなかった。

「こするから真っ赤だ」

総二郎が微笑むと、優紀は息を飲みもっと真っ赤に染まった。

たった一度の行為は総二郎にぬくもりを残した。

忘れられないぬくもり。

「で、でも、きっとやり直せます!・・・西門さん、ぜんぜん楽しそうじゃないです。サラ先輩と離していたとき・・・とってもすてきな笑顔でした。明るくて、楽しそうで・・・ちょっと男の子みたいで・・・」

「それはガキのときを思い出すからだよ。もうオレには必要ない」

また頬をこすろうとする優紀の細い手首を握り、流れる涙を指でそっと拭ってやった。

納得がいかないとでも言いたげに眉尻を下げ、きゅっとピンク色の唇を引き結んでいる。

「でも」

「たくさんの女と寝ても満たされないんだよ」

総二郎は陰りのある、寂しそうな笑顔を見せた。

「優紀ちゃん、オレをあっためてよ」

優紀の耳元でそっと囁き、優しく抱きしめた。

「何人いてもだめなんだ。優紀ちゃん、オレをあっためて」

総二郎は懇願を装ったつもりだった。

しかし、総二郎は腕のなかの小さなぬくもりに狂おしいほどに願っていた。

つれない態度を取るな

オレのことが気になるよね

オレを見ろ

「に、西門さん・・・」

躊躇う優紀の声音に総二郎は余裕を失くしていきながらも、搦め捕るように追い詰めることはやめなかった。

「もう他の女と遊ばない。だから・・・優紀ちゃん、あっためて。ずっとあっためて」

優紀の身長に合わせ膝を折り、涙に濡れた大きな丸い瞳をまっすぐに見つめた。

頬も鼻の頭も真っ赤でロマンチックではないけれど、とてもかわいらしい。

優紀は視線が絡むのに堪えられなくなったのか、もじもじと俯いた。

「あっためて、優紀」

とろけるほど甘い声音に優紀がぴくりと身体を震わせ、そろそろと顔をあげた。

上目遣いの瞳は清潔な色気を感じさせる。

どうしても手に入れたかったのだと総二郎は確信していた。

「わたし・・・西門さんをあっためてあげられますか?」

仔犬のようにまっすぐに見つめる視線。

「うん。優紀にあっためて欲しい」

優紀の恥ずかしそうな笑顔が総二郎にはくすぐったかった。



<了>






久しぶりに思い出して続きを書きました。あれ?これで終わり良かったかな?と考えたのですが思い出せませんでした(笑)
プレシャス番外のR18での前にこちらをUpしました。決してR話をもったいぶっているわけではないのですが、ちょっとした気の迷いです。
このお話は、恋愛中毒の王子が登場。真実の恋人を手に入れて恋愛中毒を辞めますと言うお話でした。
次こそはプレシャス番外を書きたいと思います。



プロフィール

紫木蓮

Author:紫木蓮
琳派と文学に気ままに魅かれています。
こちらではだいすきな花男の二次を置いています。
類さんと総二郎優紀カップルの偏りがちなラインナップ予定です。

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