precious 26




優紀は田中と名乗った弁護士に連れられ近くのカフェに入った。

奥まったひと気のない席を弁護士が選んだのを見て優紀はとても憂鬱な気分になる。

注文したコーヒーとグレープフルーツジュースが運ばれ、ウェイトレスが離れるのを確認してから弁護士は口を開いた。

「突然、お声をかけてしまい驚かれましたか?」

弁護士は落ち着いた声で優紀に話しかける。

「はい・・・」

「それは失礼しました。・・・先ほど、週刊誌の広告を熱心に見ていらっしゃいましたね。気になる記事がありましたか?」

弁護士は当然分かっているだろうに優紀に問いかけた。

優紀は俯いて黙してしまった。

「意地悪をいいましたね、すいません。松岡さん、率直に申し上げましょう。総二郎様にご婚約の話しがあります。お相手については申し上げかねますが、西門流に相応しいお家柄の方です。もちろん次期御家元夫人に相応しい美貌と教養を備えていらっしゃいます」

優紀は震える手でおなかに触れた。

それでも跳ね上がる心臓は治まらず、不安で優紀はカットソーの上からネックレスを握りしめた。

「お分かりですね?優紀さんがいらっしゃると、総二郎様に迷惑が掛かります。ご婚約者さんも不快に思われます」

優紀は溢れそうになる涙を慌ててハンカチで拭った。

「総二郎様を困らせたいとは、優紀さんも思っていませんよね?」

弁護士のぞっとするほど冷たい声音に優紀は俯いたまま両腕でおなかを庇った。

「これはお礼と申しますか・・・ただでとは申し上げません。どうぞお納めください」

テーブルの上に出された大きな紙袋の口を優紀のほうに向け、弁護士が隠すように中身を見せた。

驚くほどの札束がぎっしりと詰まっていて優紀は目を疑い、言葉を失った。

「足りませんか?必要な分を仰っていただければご用意いたします」

優紀はぷるぷると首を振った。

「いただけません・・・」

「そんなことを仰らずにお納めください。お受け取りになって、今後一切、総二郎様にはお会いにならないで下さい」

優紀はまた首を振った。

それを見た弁護士がこれ見よがしに大きなため息をひとつついた。

「いい加減にして下さい。いままで総二郎様のお相手をして下さったお礼までご用意したんです」

「違います・・・西門さんにはお会いしませんから・・・・・これはいただけません」

優紀は震える声で必死に訴えた。

「そんな、やせ我慢をしなくてもいいんですよ。ほかの方もみなさん受け取っていますから。受け取ったからといって、あなたを蔑んだりしません。あなたは総二郎様のお気に入りのようでしたからほかの方より多めにお礼をご用意しました。これは雇い主の厚意というものですよ。あなたは有り難く受け取ればいいんです」

ナイフのように傷つける弁護士の言葉に優紀は何度も首を振ることしかできなかった。

震える手でおなかに触れ、思いも寄らぬ悪意に優紀は混乱し溢れる涙を必死で堪えていた。

「西門さんには絶対に会いません。お約束します・・・・・失礼します」

優紀はそれだけを言うと走り逃げ出したいのを我慢してゆっくりと店を出た。

優紀はドキドキするのを落ち着かせようとして駅に向かう途中にある公園の階段にへなへなと座り込むと、ひと目を避けぽろぽろと零れ落ちる涙をハンカチで拭った。

総二郎の知るところなのか分からないけれど、西門から優紀は疎ましく邪魔者だとレッテルを貼られている。

それが悲しかったのか、総二郎と釣り合わない身分差が悲しいのか、混乱している優紀にはわからなかった。

手の届かないひとだと知っていた・・・

二度と会えない・・・でも・・・一生分の幸せをもらった・・・・・・

優紀はネックレスを握りしめてから、おなかに触れた。

頬笑みかけられ、優しくしてもらって・・・

『オレが帰って来るまで待ってて』、『優紀、ほかの男と付き合うな』とも言ってくれた。

本心が優紀になくてもそれは十分に嬉しくて、こころが震えた。

優紀は涙をもう一度拭うと立ち上がった。

ふらりと揺らいだ身体を自分の脚でぐっと支え、おなかを撫でた。

大丈夫、大丈夫、安心してね・・・がんばるからね。安心してね。

涙のあとがはっきりと残る顔に微笑みを浮かべ、何度もおなかを撫でた。







若いからこそ、子供だからこそ、まっすぐだからこそ突っ走ってしまうのが優紀かな。
大変だと思っていても、わかっていても自分には正直。
無鉄砲さの方向性がつくしとは違う。
優紀は受けとめられる度量が広い気がします。
そんなところが総二郎にはあってる気がします。
総二郎を丸ごと受けとめ、そんな健気な優紀が愛しくて守りたいと総二郎は思っているのでしょう。

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precious 25





優紀は家に戻ると食事を少しだけ取った。

赤ちゃんがおなか空いてしまうかもと思うと吐き気がしても頑張って食べることができて、ひとって現金だなと笑みがこぼれる。

優紀は道すがらずっとお母さんに話そうか迷っていた。

姉のほうが話しやすいけれど、きつく咎められることも許してくれないことも想像がつく。

でも、お母さんにも話したくても泣かれてしまうかも、産んではだめって言われてしまうかもと思い優紀は告げることができなかった。

それに西門さんのことを聞かれたくなかった。

どれだけ聞かれても、責められても絶対に話さないから、そうすればお母さんたちをもっと泣かせてしまう。

優紀は自分のわがままで両親をひどく傷つけることが分かっていても、大切なひととの小さな命を守りたい。

どんなことがあっても守ってあげたい。

優紀はぺたんこのおなかをゆっくりと撫でた。

大丈夫、がんばるからね、大丈夫だよ・・・・

優紀はふわんと頬笑んだ。




優紀は両親にも姉にも何も話さず家を出ることを決めた。

両親や姉に話せば、つくしたちが探すときに妊娠のことが分かってしまう。

総二郎と優紀のふたりの関係を誰も知らないけれど、もしかしてのことを考えれば、総二郎に迷惑をかけることになってはいけないと考えてのことだった。

大学は辞めるつもりだったが、どうしても思い切れずに休学届け出すことに決めた。

いちばん頭を悩ませたのはバイトをどうやって辞めるかだった。

つくしが一緒なので突然辞めることもできず、ほかのバイトをするからとしばらくの間、休みをもらえるように話しをした。

つくしがとても残念がり、嘘ついたこともあって優紀は申し訳ない気分でいっぱいになった。



二週間後、優紀は再び産婦人科を訪れ、女医さんに産むことを伝えた。

ただ、ひとりで地方で出産して暮らす予定だと伝えると、ひどく驚いた様子で応接室のような部屋に連れて行かれた。

しばらくその部屋で待っていると女医と女医と同じ歳くらいの看護師が戻って来た。

「ひとりで産むの?赤ちゃんのお父さんには話したの?」などたくさんの質問をされ、優紀は応えられる範囲で応えた。

「どうしても彼には話せないの?援助してもらえないの?」

ふたりが何度も何度も優紀に尋ねる問いを再びむけた。

優紀は先ほどと同様に小さく首を振った。

総二郎のことは絶対に何も話さないと優紀ははっきりと決めていて一切口を開かない。

優紀の強情な様子にふたりは諦めたようで、一枚のパンフレットを差し出した。

「この団体が力を貸してくれると思います。何の当てもなく家を出てしまったらすぐに貯金も底をついてしまうわよ」

女医も看護師も優しく頑張りなさいと最後は背中を押してくれた。

優紀は深く頭を下げた。



さまざまなことを片付けなればと思ったが、それは思ったよりも簡単に済んだ。

自分がそこにいる証があまりにも小さく軽くて、やはり総二郎とは違うんだなと思える。

優紀は本屋の前で立ち止まり、週刊誌の広告をじっと見つめた。

『西門流次期家元 婚約?!お相手は梨園大名跡令嬢』

『F4西門総二郎 大手製造メーカー社長令嬢と結婚へ!』

『海外出張に婚約者を同行!』

優紀の胸はドキドキして、小さな深呼吸を繰り返しておなかに触れた。

もう二度と逢えない・・・

優紀は滲む涙を拭い、その広告に背を向け振り返るとひとが立っていた。

「あっ、ごめんなさい」

優紀はぶつかりそうになり頭を下げた。

「松岡優紀さんですか?」

優紀は不思議に思い顔を上げた。

ダークスーツをぴしっと着こなした長身の男性は笑顔を浮かべ、銀縁のメガネを指で押し上げた。

「松岡優紀さんですね?」

優紀がおずおずと頷くと、男性も頷いた。

「わたしは西門家と縁のある弁護士で田中といいます。少しお時間をいただけませんか?」

優紀はどきりとして下を向き、また頷いた。







暑かったり、寒かったり、みなさん、体調はいかがですか?
梅雨前にこの暑さ!ふぅ〜〜、えらいよ!←名古屋弁で『疲れる』です(笑)
優紀ちゃんの場合、独白になるので、どうも面白みに欠けますね。
そろそろ展開していきますので、お待ちくださいませ。

precious 24





優紀は一睡もできなかった。

ベッドで横になりながら何度もぺたんこのおなかに触れる。

なんだかとても温かくて、すごく怖い。

ここに命が宿っているなんてピンと来なくて、怖い、すごく怖い。

それなのに、不思議にぽわんと胸があったかくなる。

ドキドキする。

西門さんとわたしの赤ちゃん・・・・・・

優紀はぺたんこのおなかを両腕で抱えると小さく身体を丸めた。



優紀はようやく朝方うとうとして起きたときには昼を過ぎていた。

気分は悪いままだったがバイトを休むわけにもいかず起き上がって出かける用意をした。

帰りに病院に寄ろうと保険証をバッグに入れていると急に吐き気を催しトイレに駆け込んだ。

ここ二か月ほど続いていた吐き気はつわりというものらしいと気付く。

朝から何も口にしていないことに気がつけば、優紀はおなかに手を当てる。

おなか、すいちゃうのかな?

吐き気があるようになってから、食事があまりとれなくなった優紀は四キロほど痩せてしまっていた。

いいのかな?おなか、すくよね?

何も食べないと赤ちゃんに良くない気がして不安になるけれど食欲はない。

それでも、優紀は冷蔵庫を覗き込みゼリー飲料を見つけるとこくりと飲み込んだ。

冷たくてのどごしが良いせいか、吐き気は襲って来ない。

こんなものでも、すこしは足しになったかな?おなか、すいちゃってたらごめんね。

優紀はまたおなかに触れた。




いつものようにバイトで店に立つが食事をしていないせいなのかふらふらする。

具合の悪そうな優紀を見てつくしが心配そうに顔を覗き込んだ。

「優紀、具合悪いの?大丈夫?今、ヒマだから休んでていいよ」

「う、うん・・・ありがとう。ごめんね、つくし」

優紀は親友の好意に後ろめたさを感じながらも話せるはずもなかった。

椅子に座ってぼんやりとしていると、いつの間にか手はおなかに触れている。

怖いけれど、胸がぽわんとあったかくて、優紀は触れている手でおなかをさすってみる。

ドキドキする。

赤ちゃん・・・西門さんとわたしの赤ちゃん・・・・・

考えたこともなかったのに、それは優紀を頬笑ませ幸せな気分にさせた。

なんとかバイトを終え、一緒に帰ろうというつくしに寄るところがあるからと家からもバイト先からも少し離れた産婦人科のドアを開けた。

産婦人科など訪れたことのない優紀はネットで検索をすると評判もよく、女医さんだということを知りここに決めた。

時間が遅いためか、待合室も静かで三人ほどの妊婦さんがいる。

優紀は受付を終え慣れない場所でドキドキしながら椅子に座っていると、しばらくして看護師さんに奥の診察室へ案内された。

優しそうな六十代と思われる女医さんは優紀に椅子を勧め、尿検査の結果はおめでたですよと告げた。




優紀は診察を済ませ家路につく足取りは先ほどまでの気分とはまったく違っていた。

『赤ちゃんを産みますか?』という女医の言葉が駆け巡った。

怖くても、それでも胸が温かだったのに、そう言うことじゃないんだと現実を教えられて不安になる。

西門さんに話せない・・・話せるはずがない・・・・・・・

優紀はぽろりと涙を流し、おなかに手を当てた。

やだ、やだ・・・・だめ・・・大切だから・・・・・・・・

それでも、優紀には赤ちゃんを産む選択しか考えられない。

また一粒涙が零れ落ちた。

いくら優紀がこどもでも想像ができる。

ひとりで赤ちゃんを産むのも育てるのも大変で、もしかしたら赤ちゃんが大きくなったら自分のことを恨むかもしれない。

でも・・・・でも・・・・・大切な、大切なひとの赤ちゃんだから大切にしたい・・・・・

優紀はおなかを優しくさすった。

でも・・・・・・絶対に迷惑をかけちゃいけない・・・西門さんに絶対に迷惑かけない。

優紀はぎゅっと手を握るとそう決意すると涙に濡れた頬をごしごしとこすり拭い、綺麗な三日月を見上げた。







優紀、独白です。誰にも話してないので、会話形態にできず読みづらいかとおもいます。すいません。
古い記憶を辿りながら産婦人科のシーンを書いたのですが、思い出せなくて曖昧(笑)
妊娠発覚に初めは愕然としていた優紀ですが、優紀らしく総二郎との赤ちゃんにこころをときめかせます。
産婦人科に行き現実に引き戻されますが、やっぱりそこは芯のしっかりした優紀はぶれません。


precious 23




胸元の透明な綺麗な石を弄るのは癖になっていた。

あまりに大きさに『本当にダイヤモンドなのかしら?』と思っても、宝石の知識などのないから考えても優紀には分からない。

けれど濁りなど一点もなく美しく綺麗で強靭な石は総二郎のように、優紀には思えた。

美しく深淵な美の世界を自分のものとして、尊敬と羨望を受け、何でもないというようにしっかりと立っている。

透き通った輝きは総二郎の緑色を帯びた黒い瞳の真摯な輝きに似ている。

総二郎が茶を点てるときの眼差しは優紀のこころをしんとさせ、魅き込まれる。

たったひとつしか変わらないのに、それはあまりにも大きな差で、あまりにも魅力的で優紀は遠くから憧れ見つめることしかできなかった。

優紀は偶然とはいえ総二郎がこころの奥に大切に仕舞っていた初恋を図々しく暴いた。

けれどそれは、美しく綺麗で強靭な総二郎のうちに優しい優しい繊細さと悲しみを秘めていることに触れてしまった機会だった。

それから優紀のこどもっぽい憧れと好きは、どうか総二郎が素敵な恋ができますように、総二郎を大切に愛してくれる女性が現れますようにと言う願いに形を変えた。

総二郎は相変わらずのたくさんの女性たちとの付き合いを続けていたが、優紀が口を挟めるはずもなくただ黙って見つめることしか出来なかった。

そんな優紀の気持ちなど知らぬ総二郎の気まぐれな誘いは優紀をひどく戸惑わせた。

いけない・・・

素敵な恋ができるように、西門さんを大切に愛してくれる女性が現れるように願っているのに・・・

気持ちがひどく揺らいでも、美しく頬笑む総二郎の優しい瞳と声にどうしようもなく魅かれてしまう。

少しだけ・・・少しだけ・・・・・・西門さんのそばにいたい・・・・・でも、いけない・・・・・・

いけないと思っていても抗えることなどできず、優紀はとうとう『おねがいします』と答えていた。

優紀とデートや情事を重ねても総二郎は女たちとの付き合いは変わらず、気付かない振り、知らない振りをした。

デートの待ち合わせに遅れた総二郎が香水の香りを纏っていたことは二度や三度のことではなかった。

胸がキリキリと痛んでも優紀は微笑みを浮かべた。

自分は気まぐれの相手で総二郎の美しい女たちのように恋の相手ではないから。

いけないと分かっていても総二郎に嫌われたくなくて、勧められるままにコンパに行き、ベッドの中で名を呼べと言われ初めて「総二郎さん」と呼んでしまった。

けれど他の男性と付き合ったり、セックスをすることは恐ろしくてできはしなかった。

連絡先を渡されたり、交際を申し込んでくれるひともいたけれど、優紀は総二郎のほかの男性に触れられるなど恐ろしくていつもびくびくしていた。

そのうえ、コンパには何度も参加するのに男性に声を掛けられても断わってばかりの優紀に友人が反感を持ったり、総二郎が時折大学に現れることでやっかみを持たれたりして、学内で悪口を言われるようになっていた。

総二郎が飽きれば即終了という関係は当然のごとくつくしたちには内緒にしなければならなかった。

辛いことがあっても、相談相手がいなくても優紀は一生懸命にそれを押し隠さなければならない。

それでも、総二郎への気持ちはまったく変わらない。

総二郎を思えば胸がきゅんとする。

綺麗な微笑みをむけられれば頬が赤くなってしまう。

想いが溢れてしまう。

切なく痛む胸をぎゅっと押さえていると震える唇から想いが溢れた。

「西門さん、好き・・・・・」



空港で総二郎を見送った数日後、しばらく前から体調が悪かったのが本格的にひどくなりベッドの中で眠っていた。

始終、気持ち悪いためほとんど食事も取れない、そのせいか目眩がするし、熱っぽい。

風邪でも引いたのかなと思って小さくため息を着いたとき、あれっ?と疑問が浮かんだ。

生理が来たのはいつだっただろう・・・

少しばかり生理不順で一、二か月生理がないことは珍しくはないが、それ以上来ないことは今までなかった。

優紀は指折り数えてみると三か月も生理が来ておらず、そろそろ四か月になろうとしている。

「うそ・・・・・・まさかね・・・・・・」

優紀は青くなると、慌ててベットから起き出し着替えて隣町のドラッグストアに行き妊娠検査薬を購入した。

近くのカフェでお茶を飲み気分を落ち着かせてからトイレを借りた。

優紀は白いスティックを両手で持ち、判定結果のくっきりとしたピンク色の線を呆然と見つめた。







ようやくここまで来ました・・・
優紀が誰とも話してないな?と思ったら、そうでした、総二郎とのことは誰にも話していないのです。
優紀がひとりで全部抱えています。健気すぎて、黒王子にはもったいない!
さて実はこの回はの〜〜〜〜様のコメからふと気がついて修正をしました。
「こんな仕打ちをされても優紀は総二郎のことが好きなんですよね?」そうだよねー、あの黒王子を好きなんてマゾ?と思われても仕方ない(笑)いや、マゾじゃないし!
で、どうして優紀が総二郎に魅かれているのかを書かなきゃ!
自分の頭の中では設定されていても呼んで下さる方には伝わらない!と加筆しました。
これで、優紀がどうして総二郎に魅かれてしまうのか、分かっていただけるとうれしいです。
の〜〜〜〜様、ありがとうございました。

P.S. m〜〜〜様、いつもコメありがとうございます。返信したつもりのコメが未承認で公開されていませんでした。本日気付きUPいたしました。よろしければ、precious20 をごらんくださいませ。

precious 22




総二郎はあきらに言われるまでもなく日本に帰るための準備を進めていた。

残っていた仕事を大急ぎで片付け、おびただしい数の招待状には丁寧な詫び状に日本での茶会の誘いを添えれば、喜びの礼状が舞い込む。

そうすれば帰国の目処も立ち、総二郎はあとを現地スタッフに任せさっさと機上の人となった。

ぽっかりと時間が空くと総二郎はこころの中の優紀の姿を追い、優紀としたなんでもない会話を繰り返し思い出し微笑みが浮かぶ。

それなのに次には、少女のような小さな優紀が大金を前に怯える姿も現れる。

そんなことを何度も重ね総二郎は知らぬ間に疲れを溜め込んでいくようだった。

その上、あきらにさえ伝えることが躊躇われ隠し続けていることがひとつあり、総二郎を嫌な気分にしていた。

遊び心で優紀を口説いたとき恥ずかしそうに好きな人がいると総二郎に告げた。

告白する気はないと言っていたけれど、もしかしてその男と想いが通じ合ったのではないだろうかと嫌な予感に駆られている。

F4の西門総二郎の女に手を出したことに男はビビり、男に惚れている優紀もともに逃げたのではないだろうかと疑う気持ちがないわけでもなかった。

本来ならあきらに伝えその男を調べれば優紀のことが分かるかもしれないことは百も承知だった。

けれど、優紀を連れ去った男のことが過るだけで身が震えるほどの怒りが込み上げ、口の端に乗せたくもなかった。

それでも、もし男と逃げていても、総二郎は優紀を取り戻す気持ちは変わらなかった。

優紀がさまざまな物を捨ててともに逃げることを選ぶほどだから真面目な男だろう。

けれど、総二郎は優紀が望むものならなんでも買い与え、その男には決して出来ない贅沢な生活をさせ、自分のもとから決して離しはしないと今ははっきりと決めていた。

優紀の失踪した原因が何か、総二郎はもうどうでもよかった。

ただ優紀をこの腕の中に取り戻したいだけだった。




優紀は銀色のチェーンの先の大きな綺麗な石を指で触れ、暗い空に飛び立つ機影を見送った。

総二郎のことばが優紀の胸を今も震わせていた。

『オレが帰って来るまで待ってて』

『優紀、ほかの男と付き合うな』

総二郎の美しい微笑みと優しい声が何度も優紀の胸を震わせる。

『優紀、いい子で待ってるんだよ』

総二郎にすっぽりと抱きすくめられ囁く声と吐息が耳に残っている。

優紀はぽろぽろと涙を零した。

西門さんなんて嫌い・・・大嫌い・・・・大嫌い・・・西門さん・・・・・・・・・・好き・・・

ひとりで泣きながら何度もそう繰り返した。

総二郎にほかの男と付き合ってみろと言われコンパに何度も脚を運んだ。

知らない男性と飲めないお酒の席は優紀にとって苦痛でしかなく、それでも平気な振りをし総二郎に話しをした。

それを面白そうに聞く総二郎を見て、優紀は泣き出さないようにするのに必死だった。

伝えられない、伝わらないはずだった気持ちが伝えられた。

ううん、言わされたんだ・・・

『オレのこと好きだよね?』

総二郎に尋ねられ、優紀は頷いてしまった。

頷いた優紀はご褒美だというように、総二郎から頬に口付けを受けた。







黒王子登場(笑)ぐだぐだしてたのに、やっぱりまだ腹黒でしたwww
やっと優紀ちゃん登場です。
すこし優紀のお話を続けていこうかなと思っています。

プロフィール

紫木蓮

Author:紫木蓮
琳派と文学に気ままに魅かれています。
こちらではだいすきな花男の二次を置いています。
類さんと総二郎優紀カップルの偏りがちなラインナップ予定です。

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