precious 5





優紀との仲は誰にも秘密にしていた。

優紀に彼氏ができるまでという期間限定だということもあったが、付き合いを終わらせるとき面倒だし、つくしにバレればうるさいことこのうえないのは目に見えていた。

優紀に秘密だと話しても、にっこりと笑顔で「わかっています」と応えた。

けれど優紀が誰にもバレないように装うことができるとは思えず、総二郎はバレたときはそのときのことと考えていた。

それなのに優紀は総二郎との関係をおくびにも出さず、集まりの中でも以前とまったく変わらぬ様子だった。

こういうことには聡い櫻子にさえ気付かれず、優紀の意外な一面を見た気がした。



久しぶりの集まりは滋の邸で夕刻から集まり、映画を見たり、食事をしたりとのんびりとそれぞれが過ごしているが、つくしたちは集まっておしゃべりに興じていた。

総二郎やあきら、類もそれを聞きながら、なんだかんだと口を挟み会話が弾んでいた。

「合コン?」

つくしが目を丸くして声を上げた。

「うん、人数が足りないからって突然誘われたの。初めてだったから戸惑っちゃた」

優紀が肩をすくめて笑った。

「優紀さん、合コンに行ったことなかったんですか?」

櫻子の質問に優紀がうんうんと頷いた。

「うん、行ったことなかったよ。櫻子ちゃんは行ったことあるの?」

「もちろんありません。男には不自由してませんから」

櫻子の当然とばかりの返答に優紀が笑いを洩らした。

「そうだね。櫻子ちゃんなら、そうだよね」

「それでカッコいいひとはいたの?」

滋のほうも興味津々という様子で尋ねる。

「うーん、どうかな?初めて会うひとだから、分かんないよ」

「見た目ですよ、見た目」

「カッコいいんじゃないのかな?」

優紀は一生懸命に記憶を探るように上を向く。

「優紀、ほら団子屋に来たあの男の子、合コンで会ったんだよね?」

「ああ、そう。バイト先を聞かれたから・・・まさか来るとは思わなかった」

優紀は小首を傾げて頬笑んだ。

「先輩、そのひとカッコよかったですか?」

「うん。優しそうで真面目そうなひとだったよ。優紀ったら話しかけられたら照れて赤くなるんだもん」

つくしが揶揄うと優紀が赤くなった。

「そ、そんなことないよ!もう、つくしったら、変なこと言わないで」

優紀はさらに赤くなり反論するが、滋も櫻子も加わり余計に盛り上がる。

総二郎もあきらも、そんな普通の経験などなく、なんとなく笑ってやり過ごすしかなかった。

類にいたってはパリの邸にとびきり可愛い仔猫を飼い、溺愛しているのだからまったく興味もないようだった。

「それにしても、優紀さんはいいですよね」

櫻子が珍しくため息を付いた。

「どうして?」

「先輩は別として、この中で自由に結婚できるのは優紀さんだけじゃないですか。好きになったひとと結婚できるなんて憧れます」

櫻子にしてはセンチメンタルな物言いだった。

「そうね。滋さんや櫻子ちゃんは恵まれてるって思ってたけど・・・」

優紀はどんな表情をしていいのか分からないようで、少し俯き加減になり視線を遠くに落とした。

「小さいころから教え込まれてるから大丈夫です。それが自分の役目だと思ってます」

櫻子はきっぱりと言い切り、総二郎もあきらも滋も、同意も頷くこともしなかったが当然のことと受けとめていた。

自分の家に取っていちばん大きな利益をもたらす相手と結婚することは決まっている。

自分が選ぶわけではない。

優紀は櫻子に頬笑みかけ小さく頷いた。







「ちっとも楽しいお話じゃないなー」と思われていらっしゃる方も多いかと思います。
そうですね、総二郎は黒王子だし、けっこうな鬼畜でひどい・・・
でもね、でもね、総優好きのみなさんが望んでることは、わたしも同じです!
今はね、ひどいかもしれません。もっとひどくなるかもしれません(えっ?!)が、待ってて下さい。
あなたが優紀目線で切なく悲しいのか、総二郎目線で鼻持ちならない王様気分(笑)か、分かりませんが待っていてください。
わたしは結構、いい気分で書いています!なんでって、先がね・・・先が楽しみだから(笑)バカですいません。


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precious 3





水族館デートを楽しみすぎてランチには遅い時間になっていた。

「優紀ちゃん、なに食べたい?」

「ランチ用意してきました。海を見ながら食べませんか?」

「用意して来たの?」

「はい。あ、おいしいサンドイッチのお店なんです」

総二郎が手作りが苦手なのを承知している優紀は手作りのお弁当などを持って来ることはない。

「優紀ちゃん、おすすめか。いいね」

総二郎は優紀の肩を抱きゆっくりと海辺へ向かいベンチに並んで座った。

優紀が用意したサンドイッチを並べて一生懸命に説明する。

それを面白く思いながら総二郎はコーヒーを飲んだ。

「いろいろあるね。優紀ちゃんのおすすめはどれ?」

優紀の分の紅茶を差し出しながら尋ねる。

「海老とアボガドははずせません。でも、ハムとチーズもおいしいんです。フランスパンがおいしいんですよ。西門さんはどれがいいですか?」

「じゃあ、ハムとチーズにしようかな」

「はい。海老とアボガドもあとで食べて下さいね。ローストビーフもおいしいみたいですよ」

優紀が渡してくれたフランスパンのサンドイッチはあっさりとしておいしい。

先ほど水族館で見たイルカや魚、優紀の勉強の話をしながらランチを済ませると少し肌寒くなって来て優紀が小さく震えた。

ぽかぽかとした小春日和も海辺の風は少し冷たい。

「寒くなって来たね」

総二郎は優紀の華奢な肩を抱き寄せ顔を覗き込むと、頬をピンク色に染め小さな声で頷いた。

「はい・・・」

優紀のペースで進んでいたはずのデートが一瞬にして崩れた。

頬を染めていたピンク色はほっそりとした首も染め、恥ずかしそうに落とした視線が揺らいでいる。

もうすっかりデートの主導権は総二郎が握っていた。

「優紀」

「・・・・・はい・・・・」

総二郎の艶を秘めた声に優紀は小さな小さな声で返事をした。

そして、恥ずかしさに堪えかね瞳を閉じている優紀の顎を指を添えて上げさせた。

震えるまつげが優紀の緊張そのままで総二郎を頬笑ませた。

デートをするようになってから五か月ほども経つというのに相変わらずの初心ぶりで、まるでファースキスのようだと総二郎はいつも目を細める。

総二郎はゆっくりと唇を重ね、柔らかくてかすかに震える唇を食み舐めると優紀が声を洩らした。

「・・・あっ・・・ふっ・・・」

初心かと思えばこれくらいの口づけで瞳を潤ませ甘い声を漏らすのだから淫らなのか初心なのか分からない。

「おいで、優紀」

総二郎は優紀の手を引き立ち上がると、デートの続きを始めた。







こちらの優紀も初心なんです♡
なんだかふたりのデートを書くのはたまらない!
恥ずかしくなるほどの普通のデートwww
総二郎としても優紀相手でなければないでしょうね♪

precious 2





総二郎はシャワーを浴びて女のきつい香水の匂いを念入りに洗い流した。

昨夜の服を着るのはイヤだったが仕方なく羽織りペットボトルの冷たい水を飲んだ。

今日のデート先にはこの服装ではいまいちだなと思い途中着替えようと決めた。

「じゃ、オレ、先に出るから」

裸のままベットでタバコを吸っている女に声をかけた。

「えー!あたしも行くから待ってて。一緒にコーヒー飲もうよ」

「オレ、今からデート。じゃあね」

総二郎はひらひらと手を振ると女を置き去りにして部屋を出た。

ホテルを出るとタクシーで行きつけのセレクトショップに立ち寄りカジュアルな装いに着替えると気分もさっぱりとする。

待たせておいたタクシーに乗り込み時計を見るとまだ待ち合わせの時間には余裕があるけれど、きっともう待っているに違いないと自然と笑みが浮かんだ。

待ち合わせの場所にはいつもよりオシャレをした優紀が待っていた。

まだ約束の時間まで十五分もあるというのに一体どれくらい前から来ているのだろうと思う。

いつも総二郎より早く着いているので以前にも総二郎は優紀に尋ねたが、そんなに待っていないとか、用事が早く済んだからと笑っていた。

「優紀ちゃん、お待たせ」

「西門さん、おはようございます。まだ待ち合わせの時間の前なのに・・・」

優紀はぺこんとお辞儀をしてから不思議そうな表情を見せた。

「優紀ちゃんとのデートが楽しみで早く来ちゃったよ」

「西門さんったら、本当に上手なんだから」

優紀はふふっと面白そうに笑う。

「優紀ちゃん、今日もかわいいね」

総二郎は肩を抱くと優紀の歩調に合わせて歩き出した。

赤い膝丈のフレアースカートと黒のブーティーがいつもより少しだけ大人びているがよく似合っている。

「ありがとうございます。西門さんはいつもすてきです」

優紀の明るい笑顔に総二郎も笑顔になり、目的地の水族館までのんびりと話をしながら歩いた。

優紀がバックからチケットを取り出し一枚を総二郎に差し出した。

「先に準備してくれたの?オレが買ったのに」

総二郎は普段デート代を女に払わせるようなことをしないのだが、優紀は自分で払おうとすることが多かった。

総二郎が連れて行くレストランやホテル代はともかく、カフェなどは先回りして優紀が払っていることがある。

そんなふうだから他の女のように強請ることもなく、総二郎としては調子が狂うことも多かった。

「これくらいは大丈夫です。それより早く中にはいりましょう」

優紀に腕を引っ張られ総二郎は苦笑した。

「水族館、久しぶりなんです。西門さんは?」

「オレもかな」

と答えながらも子どものときに訪れた記憶しかなかった。

普段遊んでいる女とは違う優紀の明るさや子どもっぽさは総二郎には珍しくてなんとなく楽しく気分が軽くなる。

水の中をゆったりと泳ぐイルカに丸い瞳をキラキラさせて覗き込み、イルカが寄って来ると手を振る。

「ほら、西門さん、こっちに来た!かわいいですね」

「ほんと、かわいいね」

優紀が子どものように声を弾ませて総二郎を見上げると、真っ赤になって口を両手で覆った。

「騒いでしまって、すいません。恥ずかしいですよね。すいません」

もごもごと口ごもる優紀の頭を総二郎は優しく撫でた。

「大丈夫だよ、優紀ちゃん。優紀ちゃんとのデートに大人っぽさは求めてないからさ」

総二郎が揶揄うように言うと優紀はぷぅと頬を小さく膨らました。

「西門さんったら、ひどい!どうせ、ほかの女のひとと違って子どもっぽいです」

優紀は総二郎が変わらず女たちと遊び歩いているのを知っている。

「大丈夫、大丈夫、優紀ちゃんはそこがかわいいんだからさ。あっ、ベッドの中でも、そこがかわいいよ」

総二郎は優紀の顔を覗き込みにっこりと美しい微笑みを見せると、また真っ赤になってぷいっと横を向いた。

「もういいです!西門さん、行きますよ」

優紀は照れ隠しのため総二郎の腕をぐいぐいと引っ張って先を急ぐ。

「どこ行くの?」

「もうすぐイルカのショーが始まるんです。西門さん、行きますよ」

振り向いた優紀はもう可愛らしい笑顔だった。

優紀とのデートは総二郎をいつも笑顔にさせ、楽しい気分にさせる。







ちょっと子どもっぽいけれど屈託のない明るい優紀です。
そんな優紀と楽しいデートをする総二郎なんですが、遊び人はそのまま・・・
水族館デート!このふたりにさせてあげたかった♡
優紀のニコニコ顔が目に浮かびます♪



precious 1



『alone』の連載版となります。題名も変更し、年齢設定を少し変えています。
また『in the closet』や『Fall again』などとは各々の感情も違い、ちがう恋愛ストーリーです。
ただお読みいただいて気持ちの良いお話にはしたいと思っています。
よろしければ、お付き合いください。


優紀 有名女子大学の一年生、総二郎 大学二年生 の初秋から始まります。







街路樹の葉が赤や黄色に色付き落ち始めていて、カフェでするお茶も外では少し寒くなってきている。

優紀は温かいミルクティーのカップを両手で抱えふぅふぅと冷ましてから口をつけた。

「あったかーい!」

ニコリとまだまだ子どもっぽい笑顔を浮かべた。

有名女子大学に入学した優紀は周囲に感化されたのか女子大生ぽい可愛いけれど普通のファッションに身を包んでいる。

「それ飲み終わったらメシ行こうか」

優紀はまたニコリと笑い頷いた。

優紀とは高校生のとき一度だけ関係を持ったがふたりのあいだには仲間以上の関係も感情も生まれず、その後は変わらず仲間のひとりとして付き合っていた。

そのうち優紀が受験するためしばらく集まりにも参加することはなかったけれど大学に合格したのを機にまた集まりにも顔を出すようになり再会した。

梅雨のころ集まりの帰り偶然、総二郎が優紀を送ることになった。

「先週の金曜日の夕方、西門さんがきれいなひととデートしてるの見ました」

「声かければ良かったのに」

「そんな無理ですよ!デート中のカップルに声かけるほど、わたし、厚かましくないです」

「そう。で、優紀ちゃんはどうなの?」

「どう?どうって?」

優紀が不思議そうに小首を傾げた。

「彼氏とかいないのかって聞いてるんだよ」

「彼氏はいないですけど、好きなひとはいますけど・・・」

優紀は恥ずかしそうに小さな声で呟いた。

「好きなひといるんだ。告白しないの?」

「わたしなんかって言いませんけど今は彼氏とかいいかなって思っています。勉強も頑張らないとついて行けないし」

優紀は赤くなりながらも寂しげな微笑みを浮かべる。

「オレには告白したじゃん」

「そんなこともありましたね」

優紀はへヘッと首をすくめて笑う。

どの仕草も素直で噓偽りがなくくもりも無い笑顔は清らかなままだった。

「もったいないよ、優紀ちゃん。可愛いんだから恋しなきゃ」

「西門さんじゃないからモテないんです。そう簡単に行きません」

優紀がぷぅと口を尖らせ、今度は総二郎が笑った。

「じゃ、彼氏が出来るまでオレはどう?」

それはちょっとした遊び心だった。

「え?」

驚いているのか、意味が分からないのか、優紀が丸い瞳をさらに丸くしていて、総二郎はちゅっとリップ音を立て唇を重ねた。

「恋してないと女の子は綺麗になれないよ。彼氏ができるまでオレが相手してあげるよ」

頬笑みかける総二郎に優紀は赤くなりながら「おねがいします」と消え入りそうな声で答えた。







『alone』と『again』のどちらにしようかと思っていました。
「againを」のコメもいただきましたが、拍手の多いこちらから始めさせていただきました。ごめんね、悠様。
しばらく続くかと思いますので、お付き合いいただけるとうれしいです。


プロフィール

紫木蓮

Author:紫木蓮
琳派と文学に気ままに魅かれています。
こちらではだいすきな花男の二次を置いています。
類さんと総二郎優紀カップルの偏りがちなラインナップ予定です。

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