a love so brand new 16





お風呂を上がり、もこもこの肌触りのいい温かいパジャマに着替えると部屋に戻る。ドライヤーで髪を渇かしながら、今日総二郎に復習っておくように言われた英熟語をチェックする。明日は最後の国立大学の試験だ。
短かった髪はすこし長くなり、温風に毛先がふわりと舞い不意に総二郎を思い出した。
『髪、長くなったね。よく似合うよ』と総二郎は髪を撫でた。そして綺麗な指が優紀の色の薄い髪を一房摘んだ。
総二郎にしてはどうということのない自然な仕草だったろうが、優紀を十分にドキドキとさせた。

西門さん、どういうつもりなんだろう・・・・・これって、本当にお付き合いしてるのかな?・・・それとも受験が終わると何か変わるのかな?

お付き合い始めたのは春だったが、そろそろ一年になろうとしている。
ふたりでたくさん時間を過ごした。いつも勉強を見てくれている。でも、それだけ。手を繋ぐ。でも、それだけ。手を繋ぐ以上のことは何もない。はじめは勉強を教えてくれると言っても緊張して身が入らないのではと思ったけれど、総二郎はしっかりと真面目に教えてくれるので緊張している余裕もなかった。気がつけばふたりでいる時間は優紀の受験勉強に費やされ、その合間におしゃべりをするくらいだった。
受験中だから優紀にはそれで十分だったが、総二郎はどうだったのだろう?
誕生日もクリスマスもバレンタインも『受験が終わるまでイベントはお預け』と総二郎は家庭教師らしい気遣いを見せ、優紀は勉強に没頭できた。

本当にこれで良かったの?・・・お付き合いしているのかな?

いまになって優紀は考えてしまうのだった。
総二郎は以前、日替わりのように同時進行で何人もの綺麗な女性とお付き合いをしていた。
でも、いまはそんなことしていない。たぶん、そうだと思う。優紀と付き合いを始めるときにそう約束をしてくれた。優紀は総二郎が約束破るはずがないと信じている。
けれど手を繋ぐだけ。それだけ。
やっぱり優紀には女性としての魅力を感じられなくて、それ以上の気持ちにならないのかも。それとも受験生の優紀に気づかっているだけ?

優紀はいけない、いけないと渇いた髪を揺らし首を振った。明日は受験なんだから集中しなきゃと背筋を伸ばした。




総二郎は受験を終えた優紀が大学から出て来るのを待っていた。
道路に停めた車に凭れ手にしたスマホとひとの波を交互に見る。優紀には終わった時間を見計らいラインを送ると程なく既読がつき『いま終わりました。すぐに行きます』と返事が届いた。







優紀が受験中だと進展がないため一気に受験期間を終わらせました(笑)
さすがの優紀も「あれ、これでいいの?」と、ようやくふたりのお付き合いについて考える余裕が出て来ています。初心でかわいい優紀なのでした。総二郎も今回は『いい王子様』なのでおイタもしていません。
もしこれが黒王子ならどうなっていたことでしょうね(笑)


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a love so brand new 15




若い次期家元、それもとびきり発展家の総二郎の運転手をしていると思いがけず驚くことも多い。だからといって表情に出すことはない。
カフェから現れた総二郎の隣にはどこにでもいる普通の少女だった。
総二郎の遊び相手は美女ぞろいだが、来る者拒まずという根っからのフェミニストでもあるので普通の女の子のこともある。
けれど彼女たちと今そこにいる少女とはすこし違った。どの女性も総二郎に一夜の相手に選ばれたことで得意げな表情をしているのに比べ、少女は微塵もそんなところはなかった。
そのうえ、少女は黒塗りの高級車をひと目見るなり驚き立ち止まり、いまにも逃げ出しそうな表情をして車に乗ることを拒んだ。
もっと驚いたのは総二郎の様子だった。総二郎は言い訳し、めずらしく自ら優しく口説き、それでも少女は乗り気ではなさそうで最後にはしぶしぶ頬を染め承諾した。
車に乗り込むとき、ドアを開けている自分に少女は心底申し訳なさそうに「すみません」といいながらぺこりとお辞儀した。礼を言われたことも頭を下げられたこともあったが、こんなふうに申し訳なさそうにされたことはなく面食らった。
後部座席のふたりは勉強の話をしていたかと思えば、カフェのケーキが美味しかったと笑い合う。
バックミラーに写った総二郎の笑顔が年相応の青年らしく嬉しそうで、そしてとても優しいのが印象的だった。



「待たせた。邸に戻ってくれ」

「お邸でございますか?」

運転手は車にひとり戻って来た総二郎に尋ねた。

「ああ、そうだ」

「かしこまりました」

車を発進させると総二郎が笑いを洩らした。

「オレがまっすぐ邸に戻るのがめずらしい?」

「いいえ、そんなことは」

「分かってるよ。オレが大学生になってから真面目になったとか、次期家元の自覚ができたとか噂してるだろ?」

「・・・ええ、まあ・・・申し訳ありません」

「謝ることはない・・・オレは真面目になったわけでも自覚ができたわけでもないよ」

総二郎はそれだけ言うと外に目をやった。
運転手は車から降りたふたりの歩く後ろ姿を思い出していた。
総二郎は少女の手を引き、先ほど通り過ぎた少女の家へゆっくりと歩いて行く。仲睦まじそうに話しをし顔を見合わせ笑い合う。
可愛らしい普通の少女はなぜか総二郎とお似合いだった。
幸せそうな総二郎に運転手は笑みを浮かべた。







やはり総二郎が優紀にメロメロです♡
もう少し早く更新するつもりだったのですが、時間がかかってしまいました。
のんびりな展開でつまらないかもしれないですが、御付き合い頂けると嬉しいです。
カメ更新ですが決してやめたりしませんので長い目で見てくださいませ。

a love so brand new 14





優紀は長文英語を読み解き設問に迷いなく答えることができている。それはすべて正答で専属の家庭教師としては出来の良い生徒に得意な気分になり、総二郎は御代わりのアイスコーヒーとアイスティを注文した。

つくしとの諍いの後も、総二郎と優紀の付き合いは穏やかに続いている。
けれどあの諍いが優紀を傷つけたのは明らかだった。優紀の口からつくしの名前が出ることがなくなり、淋し気な様子は見せないがそれが余計に不憫に感じていた。総二郎からつくしに話しをしようかと考えたけれど、つくしが簡単に折れるはずもなく、さらに拗れることにでもなれば優紀を悲しませることになりかねず二の足を踏んでいた。
それにいま優紀は受験勉強に必死に取り組み、優紀を煩わせたくないと総二郎は考えている。だから総二郎は時間を捻出し家庭教師役撤し、相変わらずまったく進展のないデートを続けていてもまったく苦にならない。それどころか優紀のそばにいることができ力になれることが素直に嬉しい。
丸の並んだノートを見て優紀は安心したのか嬉しそうにアイスティを飲んだ。

「西門さんに教えてもらうようになってから長文英語も得意になりました」

「優紀ちゃんががんばってる証拠だよ。そういえば、このあいだの模試の成績も良かったし、もう合格間違い無しだね」

「はい、模試はがんばりました。でも数学はやっぱり苦手です」

「前よりは良くできてるよ。最初は足し算から始めないといけないかと思ったけどね」

総二郎はおおげさにため息をついて揶揄うと優紀は顔を真っ赤にして口のなかのアイスティをゴクリと飲み込んだ。

「そんなにはひどくない・・・と、思います」

赤い顔のまま優紀は上目遣いで総二郎を見上げている。
拗ねたような表情は可愛らしいとしか言いようがなく自然と笑みが浮かぶ。

「冗談だよ」

総二郎は微笑みかけた。


いつものようにカフェでの勉強を終え、遅くならないうちに優紀を自宅に送ろうと手を繋いで店を出る。優紀が停車している車を見て怖じ気づいたのか立ち止まった。それは総二郎が仕事の移動に使っている黒塗りの高級車で傍らには運転手が控えている。通行人が振り返り、なかには立ち止まっているひともいた。

「車を乗り換える時間がなかったんだ」

付き合いはじめたころ優紀は総二郎が運転する車に乗ることもしなかった。『優紀ちゃんが嫌がることはしないよ。そんなにオレって信用ないかな?』と茶目っ気たっぷりに尋ねると、優紀は多忙な総二郎に運転させるなんて申し訳ないと困り顔で答えた。優紀の気遣いは嬉しいが態よく断わられてはいけないと焦った総二郎は『そんなことは気にしなくていい。優紀ちゃんとドライブできて嬉しいんだよ』と何度も口説き、ようやく総二郎の運転する車に乗るようになった。

「わたし、電車で帰ります。西門さん、忙しいのにいつも甘えてばかりでごめんなさい」

繋がれた手がいまにも離れてしまいそうで総二郎は小さな手を握りしめた。

「優紀ちゃんをひとりで帰すなんて心配でできないよ。お願いだから乗って」

総二郎が甘く囁き微笑むと、優紀は頬を染めた困り顔でおずおずと頷いた。
遊び人の手管から逃げ出せるはずもないのだが、しっかりしているとはいえ素直で初心な優紀はやはり危なっかしすぎる。
総二郎は優紀を大切に車に乗せた。







久しぶりなのに短めなうえにお話が進んでおらずすいません。続きが微妙で、付け足すと長くなりそうで、upがまた遅くなりそうなので、とりあえず切ってみました。もしかしてこのシーンって必要ないのかもしれない・・・と思わないでもないですが総二郎が優しいのでそれだけでもお読み頂きたいと思いました。



a love so brand new 13





総二郎は黙ったまま隣の優紀を見ていた。
総二郎の手を取ることをあれほど逡巡していたのに、優紀ははっきりと『好き』だと言葉にしている。どこか信じられない想いだった。付き合いたくないと言っていたのを無理やり選ばせたと総二郎は引け目を感じ、手を取ってくれてもなお優紀の気持ちを掴みあぐね触れることすらできないでいた。
握ってくれた手を離したくない。離されたくない。優紀から求めてくれるまで待つと決めていた。

「あのね、つくし・・・つくしが道明寺さんとのことでたくさん辛い想いをして悩んでるのも知っている。泣いてたのも一度や二度じゃない。それでも、つくしはやっぱり幸せそうだよ。泣いた分だけ幸せもいっぱいなんだって・・・」

「そ、それは、辛くても嬉しいこともあるよ。道明寺は乱暴だけど、あたしのことだけ見てくれる。それでも道明寺じゃなくて、もっと普通のひとと恋愛すればこんなことはなかっただろうなって思うこともある」

「つくし・・・でも、つくしはとっても綺麗になったし、本当に幸せそうだよ」

つくしが赤くなりながらも「ありがと」と呟き、ちらりと上げた視線は総二郎に流れた。

「そう見えるのは・・・あたしが幸せなのは道明寺の気持ちを信じられるからだと思う」

つくしのことばに優紀が微笑み頷いた。けれどその微笑みがすこしばかり強張っていることに総二郎は気づいた。つくしは暗に総二郎の気持ちが司ほど本気で信用があるわけないと言っていて、優紀はその疑念を跳ね退けることが出来ないのだろう。いままでの総二郎の所行を知っていれば当然ともいえた。まだ付き合いの浅い恋人の気持ちは計りきれないが、総二郎はその強張った微笑みがひどく切なくこころに響いた。

「西門さんは道明寺とはちがって・・・・・・・ごめん、優紀。やっぱり、あたし・・・用があるから帰るね」

「つくし、待って」

勝手に話しを切り上げたつくしが店から走りでて行くのを優紀も慌てて追いかけた。
総二郎が支払いを済ませ外へ出ると少し先で優紀とつくしが話しているのが見える。つくしは首を横に振ると優紀に背を向けた。
総二郎が声をかけると優紀はぎこちなく笑顔を作ってみせた。

「西門さん、つくしが失礼なことを言ってごめんなさい。つくしも本気じゃないんです。ただ・・・」

ぎこちない笑顔が崩れ、じわりと美しい涙が溢れた。
この少女に悲しい想いをさせたくはないけれど、総二郎は手を離すことができない。総二郎は頬を濡らす涙を指で拭ってやった。

「牧野が口悪いことくらい分かってるからオレは気にしてない。それより、優紀ちゃんは大丈夫?」

優紀はこくんと頷いた。

「つくしもきっと分かってくれます」

優紀が赤い目をして小さく微笑んだ。
それは儚気で、けれどまっすぐな微笑みだった。総二郎は優紀の気持ちが初めて透けて見えた。もしかしたら、それほど思っていてくれないのかもと危惧していたけれど違った。
総二郎はじわじわと胸に広がる温かな喜びを感じ、優紀の小さな手を握った。

総二郎は優紀のことを、つくしのように強情なところがない一方、優しく初心で何事にも流されてしまいそうな頼りなさを感じていた。しかし、それは間違いだった。大きな声で自己主張をしなくても、優紀はきちんと自分で考え行動している。
自分は優紀を見くびっていたらしい。この少女は賢明で、ひたむきで、まっすぐに芯が通っている。
総二郎はこの賢明な少女への愛情が深くなり、どうしようもなく魅かれていくのを感じていた。







花粉症がひどいです!あまりにひどくて内勤でやり過ごしていますが、そうばかりも言えず外へ行けばもう大変・・・ひどすぎて動けない日もあって花粉症もバカにできない、立派な病気ですね(泣)薬を一種類増やしてもらったら、これが結構良く効いています。
さて、お話ですが総二郎が優紀に惚れ込んでおります(笑)当たり前ですね!優紀はちょーかわいいのです♡


a love so brand new 12





優紀が数学の参考書とにらめっこしているのを総二郎は飽きもせず眺めていた。

優紀が受験生ということもあり和菓子屋のバイトを休み予備校に通うと聞き、総二郎は家庭教師に名乗りあげた。
付き合いはじめてもきちんと躾けられた普通の高校生の優紀がそう易々と遊び歩けるはずもなくデートの機会は週に一度がいいところで、そのうえ総二郎も大学より仕事のせいで多忙を極め、これではデートの時間を見つけることもできないと家庭教師に名乗りを上げたのが実情だった。
当初は勉強に託つけてデートしようと思っていた総二郎だったが、そこは真面目な優紀なので本物の家庭教師よろしく勉強を教えることになってしまったのは誤算だった。しかし家庭教師をしてみて分かることもあった。優紀は文字がとても綺麗で、考えることを厭わず、意外にも勘がいい。
それを知り総二郎は英徳を受験するように進めたが、優紀は曖昧に微笑み首を横に振った。つくしを通して学風を知っている優紀が尻込みしているのだろうと推測できたのでその場では強くは進めず受験直前にもう一度話すことにした。

今日も仕事を終えた総二郎が学校帰りの優紀を車で拾い郊外のカフェに来ている。数学の参考書とにらめっこして唸っているのも可愛らしいが解けそうにもないので総二郎はヒントを指し示してやる。しばらく考えをまとめると優紀はスラスラと解くことができた。

「良くできました」

嬉しそうにしている優紀に総二郎がご褒美のケーキをフォークに乗せ差し出す。あーんと恥ずかしそうに口を開ける優紀に総二郎はケーキを食べさせてやる。

「西門さん、教え方上手ですね」

「生徒が優秀だからね」

優紀はおどろいたようだが総二郎はお世辞ではなく本気でそう思っている。優紀が非常に成績が良く某有名国立大学と私立女子大を受験することも家庭教師になってから初めて知ったことだった。

「褒めてもらったのでもっとがんばります」

優紀はさらにやる気になったようでまた参考書に集中する。
優秀だというのは本気だがやる気にさせるつもりはなかったのに、と総二郎は苦笑する。デートにはほど遠いけれど優紀のペースを一番に考えている総二郎はこれも悪くないと思っていた。




つくしが眉間に皺を寄せているのを見て優紀は俯いた。
総二郎と付き合っていることを優紀はつくしに話すことが出来ずにいて、どうしていいのか分からず悩んでいた。総二郎は悩んでいることを知ると自分から話すよと言ってくれたが、優紀のことを心配してくれているからと断わった。
優紀は話す機会を見つけられずつくしと会うことが出来なかったのに、その日偶然ばったりと出会ってしまった。
優紀は総二郎にしっかりと手を握られていた。
つくしの責める視線に居たたまれずとっさに手を離そうとしたけれど、総二郎はそれを許さなかった。

「優紀、どうして話してくれないの?」

「あ・・・ごめんね。つくし、ごめんね。話そうと思ってだんだけど・・・」

「あたし、優紀に言ったよね?だめだって。西門さんはだめだって!」

「ご、ごめん・・・でも」

「でもじゃないよ、優紀!」

つくしの剣幕に押され優紀は上手く答えることができず俯いた。総二郎が堪らず口を開こうとするので、優紀は首を横に振った。

「優紀ちゃん・・・」

「西門さん、わたしが・・・わたし、西門さんがやっぱり好きなの」

優紀は膝の上の両手をぎゅっと握り締める。つくしにきちんと話したい。

「西門さんはだめだよ。たくさん彼女もいるし、付き合うだけでも邪魔もされるし誰も祝福してくれない。幸せな恋なんてできない。優紀だめだよ」

「つくし、心配してくれてありがとう。でもね・・・わたしは西門さんが好き・・・この先に起こることに怯えて諦めるのはいやなの・・・いまのこの気持ちに嘘をつきたくない」

それは小さな声だったが、つくしを見つめ優紀はきっぱりと言い切った。







優紀、カッコいいかも。つくしの心配も分かりますが、恋心は止まりません。
もちろん総二郎も優紀への想いは同じです。



プロフィール

紫木蓮

Author:紫木蓮
琳派と文学に気ままに魅かれています。
こちらではだいすきな花男の二次を置いています。
類さんと総二郎優紀カップルの偏りがちなラインナップ予定です。

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